CASE 施工事例

陽だまり空間の家

リノベーション

2017.04.30

神戸の山あいに25年程前に開発された閑静な分譲地の一画でのリノベーション計画です。
南向き敷地の横長間口で寄棟屋根といったメーカー型のデザインで、48坪5LDKの広さと間取りは、これから住む家族にとってはゆとりある住宅でした。
住み手のこだわりとして、外観の印象を変えたい、吹抜に黒い鉄骨階段を設けたい、無垢材を外壁や床に使いたい…といった要望が挙げられました。
基の間取りは中央に玄関からホール+吹抜、階段へとつながり、その両袖にLDKや個室が配されていましたが、ゆとりがありながらも各スペースが分断された空間でした。
そこで、大胆なプランの変貌とコストバランスを考慮しつつ、水周りの空間は移動せず、南北に長かったLDKを東西に向け、奥まったキッチンを開放し、元のキッチンの位置には、リビングの延長でもあり、個室にも可変するタタミの間を設けました。
そして、一番陽当りのいい場所でもある一画を、2階の床を排除して吹抜とし、そこに黒鉄階段を設けました。更には外部に面する壁面のバルコニーを撤去し、2層分のサッシで構成された大開口としています。まさにこの家の中心にこの吹抜と黒鉄階段がその存在感を持って鎮座しているのです。
2階はその吹抜を回遊するかのように、ゆったりとしたホールを介して各個室へと導かれます。そう、この陽だまり空間である吹抜が、以前のように分断されていたこの住まいの内部空間を一変し、すべてを一体としてつないでいるのです。
また、外観の変貌は玄関上の下屋をルーフバルコニーとし、既存のバルコニーと併せてレッドシダーのボックスを形成しています。
このレッドシダーのボックスと木製の玄関ドア、黒の屋根とグレーの外壁、そして吹抜の大開口の黒サッシ。これらで構成された外観は、ただ静かにこの街並みの新たな顔として、その存在を唱えています。
吹抜に降り注ぐ陽光は、季節を越えて時を重ねながら、家族の日常に様々な彩りを演出してくれることでしょう。家族をやさしく包み込む、陽だまり空間として。

設計 ソツカ建築アトリエ 曾束真治

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