ご主人の定年退職を期に、ご夫婦でこれからの住まいとしての理想を追求されたリノベーション計画です。
2軒間口の密集した住宅地で、お互いの隣棟間隔は空いているものの、屋根の軒が出ていることもあって、正面とわずかに奥側からしか光が入ってこない環境でした。
屋根瓦の撤去や急勾配の一間階段の改善も伴って、階段室を光の塔として、いかにして光を採り入れるかが課題となりました。ここでは、切妻屋根の形状を一部片流れに組替えて、南に高窓を設けることで階段スペースにまず陽光が差し込むことを考慮しました。
1階は階段スペースを中心に、道路側に居間空間と奥側にダイニングキッチンや水回りといったプライベート空間が存在しています。プランに関しては、これまでの使い勝手や日常の生活習慣を継続する形で再検討し、新たな階段スペースの光の塔の存在によって、これまで昼間でも灯りが必要だった空間に、自然の光が差し込むように生まれ変わりました。
この階段の塔は、光の採り込みと同時に風の通り道にもなり、快適な生活環境を構成する重要な存在となることでしょう。
ご夫婦にとって、こだわり抜いたこの終の棲家で、これからの日常をより愉しんで頂けることを祈っています。
設計 一級建築士事務所 ソツカ建築アトリエ 曾束真治