神戸の山の手の緑豊かな住宅地に佇むアンティーク家具や雑貨などを取り扱う、ギャラリー兼住居のリノベーション計画です。
東側に降った地形に、石積みの擁壁がひな壇上に何段にも積み上げられ、地面に寄り添うように住宅がもたれかかっている。
また、周りを囲む300坪弱もの広い外構には、多種多様な植物が豊かに育まれている。長い年月をかけて熟成した園の植物と石や土、蓄積した生活と場所への愛着から、クライアントの手の痕跡が細部まで詰まった美しい環境がそこには築かれている。
諸国で収集された家具や雑貨や絵画、住宅の各所に見える細やかな造作や補修の跡に至るまでも、それらの全てが心地よく混ざり合う。この住空間を包み込む全てのものが、まるでクライアント自信を写し出す鏡であるかのように感じられた。積層し続ける営みの跡から発せられる、その場の空気を変えないよう、注意深く意見を交わしながら計画を進めた。結果、建物の外観は、門扉周辺やデッキのような内部空間から繋がってゆく外構部分の拡張を意図したもの以外は、主にエントランス付近の配管やメーター類を隠すために施したリノベーションに留めている。外との関係を守りながら、内部は階段を中心に上下階の空間の繋がり方を出来るだけ強化した。
起伏によって雁行した建物の断面的な立体構成が、内部空間にもダイレクトに現れるようになっている。植物が生えるように、自然発生的に、その土地に寄り添って時を育み、時代と共に変容し続ける住宅である。
設計 岩本賀伴建築設計事務所 岩本 賀伴
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新築
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宝塚の平屋