奥様が姉妹同士のご家族、隣同士の2軒分の建て替えの計画です。
敷地は北に神戸の山間を望み、南は10mの道路を介して浸水整備された河川、その先には公園があり、視界は広がります。
東にO邸、西がN邸。
この計画は法的な条件からくるしのぎ合いから始まりました。
まずN邸の西に接する生活道路は幅4m未満のため、単純にその中心から2mのセットバックが必要と考えられましたが、既に存在する官民の境界明示やお施主さんの話を紐解くと、元は開渠の水路が現在の暗渠になり、法的には水路の更に西が道路ということが判明しました。結果、その残りの道路の中心からのセットバックとなり、現状の敷地境界からは一部のみが削られることとなり、以前の敷地面積はほぼ確保することができました。
2軒の建物は建ぺい率いっぱいの平面形状と高度斜線制限による法的に建築可能な最大限のボリューム内で計画され、まさしく「意地の都市住宅」でもあります。
基本的には姉妹同士、それぞれ同じような階の構成となっていますが、平面の形状が異なるため、玄関や階段の位置をはじめ内部は微妙に違ってくることになり、それが各々の住まいの特徴となりました。
1階にはDKと来局も配慮した堀り炬燵のある和室、それと水周り空間。双方こだわりのキッチンスタイルと造作の洗面台、十和田石を用いた浴室、上下階をつなぐ階段は黒の鉄骨に木の踏板で構成され、周り部分がうねるように空間にその存在を現わしています。
2階はプライベートなくつろげるリビングスペースと主寝室。O邸は建具で間仕切りながらも、一体となった壁面収納が圧巻です。N邸は素材にこだわった演出ある家具の造作となりました。それぞれ日常の癒しを演出するような空間です。
3階は子供室と収納スペース。高度斜線制限からくる屋根形状がそのまま室内に表現され、変化のあるロフト的な空間となっています。
何より、法的条件をそのままカタチに現わしたこの2つの建築は、外皮を黒で構成しながらも、金属と左官という素材を組み合わせることで圧迫感を軽減し、バルコニーの突出がアクセントにもなっています。
神戸の山間の背景と目前に存在する川と公園。この風景の中で静かに佇む漆喰の双塔が、ここに住む家族のすべてとなることを願って・・・。
設計 一級建築士事務所 ソツカ建築アトリエ 曾束真治