神戸市垂水区塩屋町の高台に位置する新築の戸建住宅です。敷地は同時期に構成された新興住宅地にあり、建蔽率40%以下という制限から建物をどのように配置するかということが重要であると考えました。
ここでは建物を中庭に向けてL字に配慮し、残りの部分を周囲の建物に協力してもらいながらコートハウスの形式を成立させています。そして全ての居室を中庭に面するように計画し、南面と東面から明るい光を受けとめられるような構成としています。
道路に面する西側ファーサイドには1、2階に連続する大きな開口部を設け、民家の縁側のような役割となってくれることを期待しています。気候のよい時期には中庭側の開口部と合わせて開放することによって、前面の通りから中庭まで心地よい風が通り抜けます。この縁側には新興住宅地が少し歳を重ねた時にも、誰かが座りコミュニケーションの窓口となって、街を錆び付かせない仕掛けとして働いてくれることを願っています。
屋根架構は登り梁形式として束立てをなくし、実際の面積以上に空間の広がりを与えると共に、ロフト空間を楽しく利用できるよう計画しています。
設計 中村×建築設計事務所 中村 重陽 / 中村 紀章
写真 多田 ユウコ