神戸の山手の造成地の雛壇状の敷地での定年されたご夫婦のための建て替えの計画です。
お父様が建てられた前の住まいは、震災を経て手入れされながらも住み続けられていて、当初はリノベーションすることをお考えでした。しかし、二世帯住居的な住まいだった2階建ての建物は、これからのお二人にとって必要以上の広さでもあり、手入れや管理も大変なことから、減築も踏まえての平屋での建て替えとなりました。
基の生活のパターンを軸に、南側の庭に面したLDKをはじめ、それと隣接する仏間と客間を兼ねた和室、そして水周りから寝室へとプライベートな空間につながる配置となりました。
将来、車椅子の生活でも対応できるように、各空間の出入りや廊下の幅なども考慮しつつ、道路からの段差の緩和も含めて、移動のしやすい空間も模索されました。
平屋ということもあり、平面状の水平力を強調するかのような広がりを表現すべく、大黒柱を中心に、玄関、和室、リビングと各々3枚の引戸を閉じたり開いたりすることで、様々な用途と生活シーンに使い分けられる可変性のある空間となっています。
そしてこれからの様々な要素を一つにまとめるかのように、一枚切妻の大屋根は、道路から一段上がった敷地から、更にもう一段、積層するかのようにその存在を醸し出しています。
この地に根付いて住まわれてきたこれまでと、これからも変わらずその日常が継続されることを願って・・・。
設計 一級建築士事務所 ソツカ建築アトリエ 曾束真治